皆さんは「エコリフォーム」という言葉をご存知でしょうか。ここでは、我々が皆さんと一緒に考えたい地球環境の事、エネルギーの事、生活環境の事などを「建築」というものを通して見ていくと共に、「エコリフォーム」の理念に基づく住宅リフォームについてご説明したいと思います。

 まずは「建築」について見ていきましょう。そもそも「建築」という学問は、「環境と共生した住宅」という考えを基に、あらゆる自然素材を活用し加工してきた事から、自然科学であるとも言われています。1996年に世界遺産に登録され話題となった飛騨白川郷などは、周囲の自然を尊重した住宅が多く見られ、まさに環境共生していると言えるのではないでしょうか。しかし、時が進むにつれ「住宅」は、いつの間にか「住む」から「住まわせられる」環境になり、さらに「住宅」が工業化製品となってからは虫も寄り付かない、化学物質の「箱」と化したわけです。

 1993年に政府が制定した環境基本法により、環境と調和のとれた居住環境を実現するための政策がスタートしました。その先導的な事業のひとつに位置づけられているのが、環境共生住宅の推進事業です。この定義として「地球環境の保全」、「自然環境との親和性」、「室内環境の健康・快適性」の3つを掲げています。そして、我々が目指すエコリフォームにおいても、同様の定義が重なるのですが、リフォームの場合は建替や新築と違い、まずその根底に「環境負荷の低減」があるのです。

 また、1997年12月には地球温暖化を防止するための気候変動枠組み条約会議(COP3-コップスリー)が京都で開かれ、各国の炭酸
ガス削減目標が取り決められました。これが、このところニュースでも話題になった「京都議定書」です。 これにより、日本では2012年までに1990年レベルよりも対象ガスを6%削減する事になりました。この炭酸ガス発生源ですが、建築分野が3分の1を占めていると推測され、我々にとって大きな課題となっているのです。

 「リフォーム」をする事とは、全てを壊して建替えるという概念ではなく、既築の住宅資源を最大限に活用し、より長持ちさせ、安全性を高め、建替え時よりも廃棄物の発生を極力最小限にとどめるという、まさにそれ自体がエコロジカルな理念に沿った行為なのです。また、大量生産・大量消費・大量廃棄が当たり前となった現代社会のあり方を根本から問い直そうとした時、「リフォーム」そのものが環境負荷の低減、または軽減になっているのです。しかしながら、日本の住宅建設は世界の先進諸国の中でも極めて短命で知られています。ちなみに、短命と思われがちな木造建築だけでなく、全ての住宅構造で見ても、イギリスが141年、アメリカが103年、フランスが86年、ドイツが79年、そして日本が30年という極端に低い数値が示されています。

 ここで建物の一生にかかるエネルギーを計算した数値を見てみましょう。皆さんもお気付きかと思いますが、建物は多くの資源とエネルギーを消費します。まず、一戸の木造住宅を建てるのにおよそ150ギガカロリー(1ギガカロリーは1キロカロリーの10の6乗倍)のエネルギーを消費すると言われています。そして、建てた後に使用される冷暖房の動力、お湯などを沸かす燃焼機器や照明機器など、私たちが生活をしていく上でも多くのエネルギーを消費します。また、住宅を改修したり解体する時に掛かる手間によっても、膨大なエネルギーを消費する事となります。これらを踏まえ、日本の住宅で消費されるエネルギーを年間平均10ギガカロリーで計算すると、居住後の10年間に消費されるエネルギーは、建設時にかかるエネルギー量とほぼ変わらない数値になるのです。これにより、生活で消費されるエネルギーがいかに高いかという事がお分かりいただけたと思います。

 つまり、建築をする時には「ライフサイクル分析」を視野に入れた設計を取り入れる必要があるという事なのです。近年、太陽熱、風力などの自然エネルギーを利用する資材が大変注目されており、確実に市場で普及しはじめました。生活をする中で省エネルギーを行うことも大切ですが、自然エネルギーの利用に配慮した上で、しっかりと計画・設計・施工された寿命の長いストック型の住宅を建てる事が、環境負荷の低減・軽減に繋がる事でしょう。

 しかし、これだけでは人が住む空間として十分とは言えません。なぜなら「住宅」は、建築をする上での重要な条件のひとつでもある「快適であり健康的な空間」でなければならないからです。高断熱・高気密化され、自然換気を排除した機械換気の冷暖房による、外界と遮断された人工室内環境内においては、決して「快適さ」を得られていると言い切る事は出来ません。その理由は、自然環境に「触れる」という関係が希薄な状態の中にいると、体の五感に感応する「気持ちよさ」に欠けるからなのです。元より、生物は本能的に自然環境下にある空間を求めるものです。もしも、それを損なうことになれば身体に異常や違和感を感じ、やがては自律神経の乱れなどに繋がる事となるでしょう。ここで大切なのは、「快適さ(自然)」と「便利さ(機能)」は意味合いが違うものだという認識を持つ事です。それにより、内側の環境、室内空間をより良くするためには、室内だけを良くしようという考えを持つのではなく、室外にもより良い環境を求めるという事が重要なのだと気付かれるはずです。つまり、内のために外を犠牲にしたり、外のために内を犠牲にしたりせず、「内」と「外」とのバランスを程よく取れる感覚こそが、快適で健康的な空間造りに重要となります。今まさに求められているのは、日頃から積極的にエコロジー理念への参加をするなど、周辺の環境保全に気を配り、「個」ではなく「共」というコミュニティーを創造していく事なのです。

 ここで少し、エコロジー理念についてご説明しましょう。そもそも「エコロジー」とは日本で言う「生態学」の事ですが、その理念の中に地球をひとつの生命体と捉えた「地球生命圏(ガイヤ)」という言葉があります。この生命圏の中では、有機(動植物)の生態系と無機(空気・大地・水)の生態系が適度のバランスを保ち、地球環境を形成してきました。しかし、時間の流れと共に人類社会はガイヤの生態系に好ましくない影響を与えるほど巨大になってしまったのです。だからこそ、今改めて人間だけでなく地球の健康をも考えた「エコリフォーム」について感心を持つことが大切なのです。また、ドイツには「バウビオロギー」という「建築生物学」の学問があります。この学問は、建築における美学的な視点に対して生物学的な視点を重視するという立場のものです。バウビオロギーで中心となるテーマは、肉体、つまり健康の問題であり、人と建築、あるいは環境との間の肉体的、心理的、精神的な関係を扱う学問分野でもあり、「エコリフォーム」に通じるところもあります。

 ここまで、「エコリフォーム」に関わる様々な事例などを挙げてきましたが、皆さんおわかりいただけたでしょうか。「エコリフォーム」の概念とは、その大半が環境倫理観にあり、「環境」こそが現代人の「教養」となるのです。つまり、自然素材さえ使えば良しと考えるのではなく、まずは「地球環境」という生命の原則を尊重した上で自然素材や法政策を取り入れ、そこから建築を通じたコミュニティーを基盤に住宅リフォームを行う
  それが「エコリフォーム」なのです。
 
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